性別適合手術を望まない性同一性障害の当事者とはどんな人だろうか

身体への性別違和があるから、性同一性障害の当事者はみな手術を望んでいるという誤解

2023年10月、性同一性障害の人が戸籍の性別を変更するための条件の1つである手術要件は「違憲」という判決が出されました。その際、ニュース記事へのコメントを読んでいて気づいたのですが、「性同一性障害の当事者は皆、体に違和感があるから手術をする」と誤解している人が多いように思えました。

結論から言うと、性同一性障害でだからといって皆体の性別を変える手術を望んでいる訳ではありません。身体の性別への違和感が強く、すぐにでも性別適合手術を受けたいと感じる人もいる一方で、身体に性別違和は感じていても、身体への負担を考えて手術を躊躇う人や、手術をしないという選択をする人たちもいます。

また、手術を終えた当事者の中には、「性別適合手術をしない人は偽者だ」と言い出す人がいます。
身体違和があっても手術をすることに抵抗がある人は少なからずいるので、「手術をしようとする人だけが本物であり、身体の性別をそのままにしておくわけない」と安直に考えられるものではないのです。

手術をしていない性同一性障害の当事者はどんな人?

性別適合手術をしていない性同一性障害の当事者とはどんな人達なのでしょうか?
具体的には、手術して戸籍の性別を変えなくても、見た目の方の性別で社会的に通っている人たちです。たとえ性別適合手術をしなくても、ホルモン注射を投与することにより、見た目の性別は変えることができるのです。

女性トイレの使用を訴えた経済産業省の職員の方(男→女/MTF)の方もそうです。性別適合手術を受けず戸籍の性別は男性のままですが、ホルモン注射を続けた結果、外見は女性に近く、女性として仕事をしています。

FTMの場合、性別適合手術をしていない人はさらに多いです。
明らかに見た目はおっさんなのに子宮摘出はしていないので、戸籍の性別は女性のままという人は結構います。
それでも見た目が男なのに戸籍の性別が女のままだと周囲の人に怪訝な顔をされるなど、当事者がストレスを感じるシーンはあるでしょう。

この裁判の論点はあくまで、「当事者に大きな負担を強いるのは違法ではないか」ということ

戸籍の性別を変えるだけのために手術をしなくてはいけないのはおかしいのではないか?
そう疑問に思う当事者が出てくるのは時間の問題だと思っていましたし、世界の国と比べてみても、手術を必須としているのはもはや日本くらいしかありません。

今回の判決は非常に大きな一歩だったと思います。
また、「心のありように基づいて身体の性別を変えている」と誤解している人がまだまた多い性同一性障害の現状ですが、今回の件でそうではないと気づくきっかけになればと思っています。

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